バブル崩壊、リーマンショック、超低金利政策……時代の波に大きく左右される不動産業。2017年度の新設住宅着工戸数は前年度比2・8%減と、3年ぶりに減少に転じた。特に地方では、少子高齢化や空き家問題、相続税対策などの課題が不動産取引にも大きな影響を与えている。宅地販売に特化し、兵庫県姫路市という地域に徹底的にこだわる「赤鹿地所」の赤鹿保生社長。激動する不動産業での生き残りに懸ける姿を追った。猪狩淳一(毎日新聞ビジネス開発本部委員) ◆減少する住宅着工件数 国土交通省によると、2017年度の新設住宅着工戸数は前年度比2.8%減の94万6396戸と、3年ぶりに減少した。相続税対策もあり、賃貸アパートの着工が増えていたが、サブリース問題などで金融庁のアパートローンの監視が強化され、投資マインドの悪化が指摘されている。さらに、2019年の消費税率引き上げ後の冷え込みも懸念される。 赤鹿地所は1990年、赤鹿氏の父が経営する建設会社の子会社として創業。1999年に現社長が引き継ぎ、仲介や新築マンションの販売などを手がけながら、十数年前から宅地販売に特化して急激に売り上げを伸ばしてきた。「地元工務店が宅地造成工事をした上に建物を建てて、建売住宅として販売されるケースが業界では一般的だが、宅地だけを販売している珍しいパターン」という。 赤鹿氏は「総合住宅展示場の来場者の約半数は『土地のないお客様』なので、ハウスメーカーを決めても結局は『土地も一緒に探してあげないといけないお客様』なんです。そこに土地だけで分譲すれば一定のニーズが絶対ある」と確信した。そこで15年前、姫路市郊外の農地の売却を仲介していたが、なかなか成約しなかったため、「ぜひ宅地としてやってみたいと安くしてもらった」。それを宅地にして分譲すると、2週間で完売したという。 ◆不動産の価値創造を提案 こうして赤鹿地所は「不動産価値創造企業」をビジョンに掲げている。事業の中で一番苦労する土地の仕入れの中で、あえて「扱いづらい土地」を率先して買い付けるという。例えば道路に面していないため、所有者が売ることも貸すこともできないような農地があれば、隣接地の所有者と交渉をして、時には土地の交換までして売却できるようにする。「敷地形状が悪い土地は売却や全く違う有効利用まで積極的に提案しています」という。その延長線上には、「宅地の周辺にコンビニエンスストアやスーパーなどを誘致したり、商業用地としてリースをしたり、そうしてきれいな住宅地ができたら、地主さんにも地域の方々にも喜んでいただける。魅力的な街づくりのお手伝いができると思った」といい、それが「不動産の価値創造」だという。 もう一つの強みが、「宅地分譲に特化」していることだという。通常宅地を分譲する場合は建て売りにして、土地の利益に住宅建築の利益を乗せてもうけにしている。「そうなるとすべてのハウスメーカーが〝競合〟になってしまう。土地だけで分譲すればハウスメーカーが〝パートナー〟になるんです」と赤鹿氏は語る。実際に物件のうち約半数はハウスメーカーからの紹介で販売している。 ここに至るまで赤鹿氏には紆余曲折があった。赤鹿氏は平成元年(1989年)に大阪の大手マンション分譲会社に入社。バブルまっただ中、営業で新人のトップとなるなど頂点を極めたが、バブルが崩壊。「何もしなくても売れていたのが、突然何をやっても売れなくなった」と振り返る。父の求めもあり、姫路に戻り、父の建築会社の不動産部門を独立して引き継いだ。その後、父の建築会社の分譲マンションの受託販売を手がけた。日本銀行のゼロ金利政策と相まって大成功し、社員も増やした。だが、勢いは続かず、「売れなくなると親子でごたごたして……」と受託販売の業務を解消されてしまう。「一気に7割の売り上げがなくって、つらかったがリストラを決断した」と振り返る、 ◆徹底した目標管理で人材育成 苦境を脱した赤鹿氏はV字回復の要因の一つが〝人材育成〟だという。社員全員が年間目標を立て、それを月次まで落として見える化し、「個人目標をまとめたものが部門の、そして全社の目標になる」という。目標と行動計画も徹底的に定量化して、緻密に達成状況を管理する。「おかげで社員一人当たりの契約件数が飛躍的に伸び、売り上げは20倍以上になった」と胸を張る。 赤鹿氏のモットーは「凡事徹底」だ。兵庫県南西部で分譲地販売を徹底してきた。今後力を入れるのが「地域に特化した宅地分譲の総合商社化」といい、「自社分譲、他社分譲にかかわらず、分譲地としてのワンストップサービスの販売スキームを作りたい」語る。「我々のような中小企業が大手に対抗してエリアを広げてもなかなか勝てない。だが姫路だけであれば情報量で中身でも絶対に負けない。地域に特化することで十分に強みが発揮できる」と意気込む。 スルガ銀行でも問題になった過剰なアパート建設ブームや、2019年の消費増税。さらに、都市部の生産緑地の税制優遇がなくなり、宅地並みに課税され、住宅地の供給過剰が懸念されるいわゆる「2022年問題」など不動産業界の先行きは不透明だ。地域と宅地販売にこだわり、徹底的に深掘りすることで突破を図る赤鹿地所の行く末に注目したい。 ◆私のビジネスアイテム 「赤鹿地所」の赤鹿保生社長がこだわるのは、ルイ・ヴィトンのビジネスバッグ「タイガ」だ。「パソコンなどいろいろな荷物を入れて形が崩れるのが嫌い」といい、30年来ルイ・ヴィトンを愛用している。「デザインというより、丈夫で長く使えるかどうかが大切。リペアサービスなどの体制が充実しているのも魅力」と語る。 ◆プロフィル あかしか・やすお 1966年、兵庫県生まれ。芦屋大学教育学部卒業後、1989年、大手マンション分譲会社に入社。91年に父が経営する赤鹿地所に入社し、99年から現職。12歳でカートレースにデビューし、現在もクラシックカーレースに参戦するほどの車好き。
<エコノミストTV>宅地分譲への特化で突破 兵庫・姫路からの挑戦 赤鹿地所 - YouTube | |
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News & Politics | Upload TimePublished on 23 Sep 2018 |
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